「勝利のときは來た!」
「この俺はあらゆる陰謀に屈せず、己の信念を貫き、ついに(最終聖戦|ラグナロック)を戦い抜いたのだ!」
「この勝利のため、我が手足となって戦ってくれた仲間たちに感謝を!」
「訪れるのは、俺が望んだ世界なり!」
「すべては(運命石の扉|シュタインズゲート)の選択である!」
「世界は、再構成される──!」
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倫太郎
「フ、フフ、フゥーハハハ!」?
高笑いすると、まゆりもダルも突然のことに目を丸くした。?
倫太郎
「今ここに、(最終聖戦|ラグナロック)の勝敗は決した!」?
倫太郎
「この俺、狂気のマッドサイエンティストである鳳凰院兇真は、そのアインシュタインにも匹敵するIQ170の憐悧なる頭脳により、“機関”及びSERNのあらゆる攻撃に対し──」?
倫太郎
「時空を操ることで、完全に勝利したのだ! まさに俺は神に等しき存在となった!」?
倫太郎
「そしてたどり著いたこの大いなる地平、我が野望が葉う世界! 世界の支配構造はリセットされ、混沌の未來が待つであろう!」?
倫太郎
「これこそがシュタインズ──」?
まゆり
「オカリン」?
と、なにを思ったのかいきなりまゆりが俺にそっと抱きついてきた。?
わけが分からず、俺は凍り付く。?
ダルもきょとんとしていた。?
まゆりは、俺の顏を見上げてくる。?
優しさに満ちた微笑み。?
まゆり
「もう、いいんだよ」?
倫太郎
「な……なにを言ってるんだ? 俺は今、華麗なる勝利宣言を──」?
まゆり
「だって……今のオカリン、泣き出しそうな顏してるんだもん……」?
倫太郎
「……!」?
まゆり
「ねえ、無理しないで? 前にも言ったよね? まゆしぃはオカリンの重荷にはなりたくないって」?
まゆり
「もう、その口調……続けなくてもいいんだよ?」?
まゆり
「辛いなら、普通に戻って、オカリンの心をね、さらけ出してもいいんだよ?」?
倫太郎
「お……れは……」?
まゆり
「もう、まゆしぃのことは気にしなくていいから」?
まゆり
「まゆしぃは大丈夫だから」?
まゆり
「オカリンはね、オカリンのために、泣いてもいいんだからね?」?
まゆり
「なにがあったのかは、分からないけど……」?
まゆり
「泣いても、いいんだよ?」?
倫太郎
「…………っ」?
ガラガラと。?
それまで必死で被っていた仮面が、ひび割れ、崩れていく。?
俺にとってまゆりは、保護すべき相手だった。妹みたいに、いつも助けてやらなきゃいけない相手だった。?
そのまゆりを助けるために、これまでずっと気を張ってきた。?
ただひたすら、突き進んできた。?
好きな女すら、犠牲にした。?
けれど今。?
まゆりの言葉で、ようやく。?
その重圧から、解放された気がして。?
もう、まゆりは死ぬことはないんだって思ったら。?
脳裏にまた、紅莉棲の顏が浮かぶ。?
紅莉棲の身體の溫もりが。?
紅莉棲の唇の柔らかさが。?
紅莉棲の最後の言葉が。?
次々と、思い出されてきて。?
もう、我慢できなかった。?
至
「ちょっ、オカリン、マジで泣いてんの?」?
視界がぼやけて。?
涙が、ボロボロと溢れてきて。?
倫太郎
「俺は……っ。俺は……っ」?
色々な感情が、頭の中でぐちゃぐちゃに混ざり合い、制禦できなくなる。?
紅莉棲にもう會えないという悲しさで、胸が苦しくなる。?
鳴咽をこらえきれない。?
涙が止まらない。?
まゆりが死なない世界。?
俺が、ずっと求め続けたこの世界には──?
かけがえのない仲間であり、俺にとって誰よりも大切な人は、いないということ。?
こんなの、あんまりだ……。?
こんなの、ひどいだろ……。?
なんで、よりによって紅莉棲なんだよ……。?
どうして、どちらかしか選べなかったんだよ……。?
どうしてそれを、俺に選ばせたんだよ……。?
どうして紅莉棲は、笑顏で俺を送り出せるんだよ……。?
どうして……!?
俺はまゆりにしがみついて。?
優しく髪を撫でられながら。?
聲を出して、泣いた。?